新型コロナウイルスの感染収束がままならない現状で、プロ野球の開幕が遅れている。4月17日、日本野球機構(NPB)は、臨時の12球団代表者会議を開催し、予定していた5月開幕の断念と交流戦中止、レギュラーシーズンの試合数削減を決めた。現時点で開幕の目途はまったく立っていない。
そして、4月23日、プロ野球の12球団代表者会議で「開幕から当面は無観客試合で開催」という方針が打ち出されたのだが・・・。
今年は開幕できないという最悪のケースも十分にありえる。東日本大震災の時も、プロ野球の開幕は1カ月半遅れたが、その時とは比べ物にならないほど、今の状況は深刻だ。
斉藤コミッショナーは「最初のうちは無観客で開かざるを得ないと思う」。12球団の代表者からも「反対は出ていない。スポーツを通して全国の皆さんに元気になってもらいたい。テレビやネットを通して見ていただこうという気持ちが強い」とも明かしたが、じつは今この裏で、球団オーナーたちの意見は真っ二つに “分断” しているという。
3月31日に、パ・リーグ社長会が開かれた。楽天とソフトバンクは「中止もやむなし。」が本音だという。『そもそも開幕していいのか?』『強行して、感染者が出たらどうするのか。今年は全試合を中止したほうがいい』という考えだ。パ・リーグは、6球団が全国に散在していて、移動距離が長いぶん、選手の感染リスクが高い。楽天・ソフトバンクの主張を受けて、パ全体として『全試合中止も検討すべき』という考えになっているようだ。
一方セ・リーグも4月2日に代表者会議を開いた。DeNA球団代表も楽天などと同様の『全試合中止』の考えを述べたが、『試合数を縮小してでも絶対に開幕したい』という巨人・阪神が抵抗し、パ6球団のような一枚岩にはならなかった」
こうして、セ・パ両リーグで「全試合中止」論がくすぶるなか、冒頭のとおり、NPBから「開幕するなら無観客試合」との暫定方針が示されたというわけだ。
ドーム球場は、まさに「密閉」「密集」「密接」の3密だ。ソーシャルディスタンスのことを考えると、おそらく4席に1人程度しか観客を入れることはできない。つまり、観客が5万人収容できる球場であっても、1万~2万人程度にまで落ち込むことは覚悟しなければならないだろう。そうなれば、入場料やグッズの売上、球場での飲食などの収益に大きな影響を与え、各球団は経営が成り立たなくなってしまう。無観客試合となれば、球団の経営は非常に苦しくなる。
経営が苦しくなれば球団には身売りや合併案などが浮上し、球界の再編問題などにも発展するケースもありえるだろう。
NPBは、5月6日以降に、再度開幕についての議論をおこなう。「ベンチ封鎖、マスク着用での試合開催もあり得る」(同前)というが、プロ野球も甲子園もない夏が、来るかもしれない。
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