東京五輪新種目・ボルダリングの日本一決定戦
東京五輪内定の野口啓代(あきよ・TEAM au)をゾーン獲得数で上回っての優勝
スポーツクライミングのボルダリングジャパンカップは9日、東京・駒沢屋内球技場で準決勝、決勝が行われた。男子は 元世界王者の原田海(20)=日新火災=が初の日本一に輝き、五輪代表の楢崎智亜(23)=TEAM au=は2位だった。 女子は 17歳の 伊藤ふたば(TEAM au)が3年ぶり2度目の優勝を果たした。 東京五輪代表の野口啓代(あきよ、30)=ともにTEAM au=は2位。 伊藤は東京五輪内定の野口啓代(あきよ・TEAM au)をゾーン獲得数で上回っての優勝となった。
高みに登り、会場全体に笑顔を見せつけた。複数のコースを完登できた数で争うボルダリング。準決勝をトップで通過した伊藤は、決勝でも勝負強さを見せた。自身以外全員が失敗して迎えた3つ目の課題。他の選手の競技の様子は見られないが、会場の雰囲気でそれを察した。「皆ができていない課題を完登するのはかなり大きい。自分が結構得意な課題だと思った」。2トライ目で見事にクリアし、勝利に大きく近づいた。
少し大人びたトレードマークの笑顔が、スポットライトに映えた。3年ぶりに女王に返り咲いた17歳の伊藤は、成長を実感していた。 完登すれば優勝という最後の課題も登り切り、満面の笑みを浮かべた。3完登でゾーン獲得は4。五輪内定の野口をゾーン獲得数の差で上回って優勝となった。14歳9か月で史上最年少優勝を達成して以来、3年ぶり2度目の優勝。「1回目の優勝はマグレというか、ハマって優勝できたという感じ。今回の優勝はしっかり実力つけて、強くなって優勝できたと思う」とうなずいた。
難ホールドを唯一攻略
他の5人が何度トライしても成功できなかった三つ目の課題に伊藤の真骨頂が出た。離れたホールド(突起物)を狙う序盤の難所。繊細なバランスが求められる中で、伊藤は重心を意識しながら反動をつけて飛びつき、2回目で攻略した。そのまま登り切り、「比較的得意な課題だった。誰もできない課題をできたことが大きい」と自信満々の表情を見せた。
緊迫した雰囲気でも、笑顔を見せるシーンが目立った。17歳は「タイトルを気にしすぎると緊張してしまったり、課題自体を楽しめない。勝ち負けというより、その大会で自分自身の最高のパフォーマンスを出せたらいいと考えている」とその理由を明かした。
オフはオーストリア合宿で13歳上の野口と壁に向き合った。「世界トップの啓代ちゃんを超えないと」。午前9時から9時間、腕も脚もパンパンになるまで登った。
五輪出場基準の解釈をめぐって国際連盟と日本協会が係争中。日本女子の2枠目は野中生萌(XFLAG)に既に内定しているとの国際連盟の見解が通れば、伊藤の東京五輪出場は絶たれる。「自分がどうこうできる問題ではない」。人事を尽くして天命を待つ。
ジャパンカップ11度の優勝を誇る野口は13歳年上だが、「啓代ちゃん」と親しみを込めて呼ぶ間柄。今回が、東京五輪を最後に引退する先駆者と戦う最後のジャパンカップだった。「啓代ちゃんが引退しちゃうのはまだ実感できない。来年はいないんだなと思うと悲しい。吸収できる部分をたくさん吸収したい」。レジェンドとの残された時間を大いに活用するつもりだ。
日本協会、五輪出場基準解釈巡り国際連盟と係争中、伊藤諦めず
日本協会は五輪出場基準の解釈を巡って国際連盟と係争中で、出場資格は不透明な状況が続いている。 国際連盟は8月の世界選手権で日本の五輪代表男女各2人は既に確定したとの認識で、代表入りの可能性が残る選考基準を定めた日本協会と食い違いが生じている。
スポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴した日本協会の主張が退けられれば、女子は野口啓代(TEAM au)に加えて野中生萌(XFLAG)が2人目の代表に決まる。 国際連盟は昨年の世界選手権で日本の五輪代表は確定したとの認識で、その基準であれば伊藤の五輪出場の道は断たれるが本人は諦めていない。「目標を変えずに(日本協会の選考の場である)5月の複合ジャパンカップに向けて調整したい」と力を込めた。
伊藤ふたば プロフィール
ボルダリングの日本一を決めるボルダリングジャパンカップを史上最年少の14歳で優勝。ユース世代で最も注目されている選手。2018年春から、ワールドカップに参戦できるため、世界を相手にどこまで戦うことができるか注目が集まっている。
生年月日 | 2002年4月25日 |
出身地 | 岩手県 |
身長 | 161cm |
体重 | 46kg |
出身校 | 盛岡市立松園中学校 |
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